
古里 靖
高校を卒業後、藤沢市の造園会社で3年、アメリカで2年、庭師修行に励み、ゴルフ場勤務を経て独立。40才頃、園芸療法に出会い、知人のNPO法人の下で障がい者の就労支援施設を設立し、所長に就任。3年後に株式会社ナチュラルライフサポートを設立し、代表取締役に就任。「ガーデニングで障がい者支援」をコンセプトに障害福祉サービス事業所レインツリーを開設。以降、12年間で事業所を4か所まで展開し、延べ300名以上の支援に携わる。事業を通して障がい者雇用の現状を知り、障がい者本人への支援から、雇用する企業の支援に軸足を移すことを決意。株式会社ウェルガーデンを設立。障がい者従業員による緑地の維持管理部門の構築を主とするコンサルティング事業を開始。著書「障害者雇用のすすめ」扶桑社より。
障がい者雇用は、中身が問われるフェーズに
ここ数年で企業による障がい者雇用が大分進んできました。
とは言え、約半数の方が1年以内に辞めてしまうという現実もあるように、なかなか思うようにいかないとお悩みの企業も多いのではないでしょうか。
今や障がい者雇用は法定雇用率を達成すればいいというものではなく、その中身が問われるフェーズに移ったと感じます。
障がい者が社会に出て働くためには、まず周囲が寛容でなければなりません。が、長く福祉サービス業界にいた私には、残念ながらまだ日本の社会と企業は、障がい者とともに働く準備ができていないように映っていました。
それでも企業はやらなければなりませんから、試行錯誤しながらやっているうちに少しづつ慣れてきた、とそんな感じでしょうか。
そこはさすがに日本の企業、素晴らしいことだと思いますが、ここにきて中には首をかしげてしまうような雇用の仕方があるのが疑問視されるようになってきました。サテライト農場で野菜作りをするようなケースなどです。
障がい者雇用は、マッチングがすべて
即戦力となる人材の獲得ができず、市場には知的と精神の障がい者が残されました。事務仕事が難しいそうした方々をターゲットに、苦肉の策とも言う形で登場した雇用代行サービスである農園タイプのサテライト雇用は、それなりに有効な手段でしたが、そろそろその役割を終えてもいい段階に来たのではないかと感じます。
サテライト雇用自体はまだまだニーズがあるでしょうし、農業に取り組む企業が増えることは歓迎すべきことでしょう。ただその実態が農業と呼べるレベルになく、果たして本当に継続できるのか、疑問視する声が増えているのです。
障がい者雇用はマッチングがすべてだと考えています。
特に軽度な知的や精神、発達障害の方は、障害が軽いがゆえにどんなサポートがいるか分かりづらく、コミュニケーションが苦手ですから敬遠されがちです。
働く力があって、伸びしろもあるのに、職場環境と仕事内容のミスマッチによって続けられなくなってしまう人が多いのは残念なことです。
障がいの特性ゆえにどんなに努力しても変えられないことがある方は多くいます。そんな本人へのサポートも大事ですが、雇う側の企業へのサポートが足りていないのでは、と離職者の現状を見聞きして考えるようになりました。
植物の力を借りる
高校を卒業して造園会社に就職して以来、30年以上様々な形で植物を扱う仕事をしてきた私は、園芸療法と出会ったのをきっかけに、「ガーデニングで障がい者支援」をコンセプトに、軽度な障害ゆえに周囲の理解が得られず生きづらさを覚える方々を対象とした就労支援事業所を約15年間経営してきました。
土や植物に触れるガーデニングは心身にとても良い影響を与えます。
事務仕事は難しく、外で体を動かしたいと望む知的、精神、発達障害の方々と支援者の方々から大変大きな支持と期待をいただきました。
ただそうして得た体力と自信を生かして働く就職先を用意してあげられなかったのが残念でした。
いつもきれいに手入れされた緑地を持つ企業は魅力的です。
そんな企業と障がい者の方々を、植物の持つ力でつなぐことが私の新たなミッションと確信し、起業いたしました。
障がい者がいきいきと働く緑豊かな企業が増えることを願っています。
